SMTP(8)                                                                SMTP(8)

名前
       smtp - Postfix SMTPクライアント

書式
       smtp [generic Postfix daemon options]

解説
       Postfix SMTP クライアントはキューマネージャからのメッセージ配送要求を処
       理します。それぞれの要求はキューファイル、送信者アドレス、配送先のド メ
       イ ン ま た は ホスト、そして受信者の情報を指定します。このプログラムは
       master(8) プロセスマネージャから起動されることを想定しています。

       SMTP クライアントはキューファイルを更新し、受信者を終わったものとしてマ
       ー クするか、キューマネージャに後で再び試行すべきであることを知らせます
       。配送状態のレポートは bounce(8)defer(8) または trace(8) デーモン の
       適切なものに送られます。

       SMTP クライアントはメール交換機(MX)アドレスのリストから目的のホストを検
       索し、優先度でソートし、そして応答するサーバが見つかるまで、リストさ れ
       た各アドレスに接続します。

       サ ーバに到達できなかったり、回復可能なエラー条件でメールの配送に失敗す
       ると、SMTP クライアントは代わりのホストにメールを配送しようとします。

       メー ル 処理に成功したら、接続は scache(8) 接続キャッシュサーバに保存さ
       れ、それに続く処理をおこなうSMTPクライアントが使えるようになります。

       デフォルトでは、active キューに大量のメールがある配送先に対して一時的に
       接続キャッシュが有効になります。セッションキャッシュは指定された配送 先
       に対して恒久的に有効にすることもできます。

セキュリティ
       SMTP クライアントはある程度セキュリティに注意を払う必要があ り ま す 。
       SMTP サーバや DNS サーバにネットワークで話しかけます。SMTP クライアント
       は固定された低い権限で chroot して走らせることができます。

標準
       RFC 821 (SMTP プロトコル)
       RFC 822 (ARPA インターネットテキストメッセージ)
       RFC 1651 (SMTP 拡張サービス)
       RFC 1652 (8bit-MIME 配送)
       RFC 1870 (メッセージサイズの宣言)
       RFC 2045 (MIME: インターネットメッセージ本体の書式)
       RFC 2046 (MIME: メディアタイプ)
       RFC 2554 (AUTH コマンド)
       RFC 2821 (SMTP プロトコル)
       RFC 2920 (SMTP パイプライニング)
       RFC 3207 (STARTTLS コマンド)

診断
       問題や処理は syslogd(8) に記録されます。不正なメッセージファイルはキ ュ
       ーマネージャが詳細な検査をするために corrupt キューに移動できるようにマ
       ークされます。

       notify_classes パラメータの設定によっては、ポストマスターにバウンスやプ
       ロトコル問題、その他のトラブルが通知されます。

バグ
       SMTP接続キャッシュはTLSでは動きません。これに必要なセッションを閉じない
       TLSオブジェクトの停止と再稼働のサポートはなく、そのためこの目的が果たせ
       ません。

       SMTP接続キャッシュは同じIPアドレスとTCPポートに当たるすべての配送先に対
       してSASL証明書が有効であることを想定しています。

設定パラメータ
       smtp(8)  プロセスは限られた短時間しか動かないため、main.cf への変更は自
       動的に拾われます。この変更を早くしたければ "postfix reload" コマンド を
       使ってください。

       以 下 の 文 章 はパラメータの概要のみを提供します。例を含む詳細は post-
       conf(5) を参照してください。

互換性の制御
       ignore_mx_lookup_error (no)
              応答しない DNS MX 検索を無視します。

       smtp_always_send_ehlo (yes)
              SMTP セッションの最初に、常に EHLO を送ります。

       smtp_never_send_ehlo (no)
              SMTP セッションの最初に EHLO は送りません。

       smtp_cname_overrides_servername (yes)
              Postfix SMTPクライアントがログの記録やSASLパスワード検索、
              TLSポリシーの決定、TLS証明書の検証に使うサーバ名を、DNS CNAME
              レコードが上書きできるようにします。

       smtp_defer_if_no_mx_address_found (no)
              MX レコードが IP アドレスに解決できない場合、メール配送を遅延 し
              ます。

       smtp_line_length_limit (990)
              Postfix が SMTP で送るメッセージヘッダおよび本体行の最大長。

       smtp_pix_workaround_delay_time (10s)
              PIX   ファイアウォール"<CR><LF>.<CR><LF>" バグを回避するために、
              Postfix SMTP クライアントが ".<CR><LF>" を送ってから一時停止する
              時間。

       smtp_pix_workaround_threshold_time (500s)
              PIX  ファイアウォール "<CR><LF>.<CR><LF>" バグ回避が有効になるま
              でに、メッセージがキューに入っていなければいけない時間。

       smtp_quote_rfc821_envelope (yes)
              RFC 821 で要求されるように、SMTP MAIL FROM および RCPT TO コマン
              ドでのアドレスに引用符を付けます。

       smtp_skip_5xx_greeting (yes)
              グリーティングで 5XX (立ち去って、二度と試さないでください) 状態
              コードを返す SMTP サーバをスキップします。

       smtp_skip_quit_response (yes)
              SMTP QUIT コマンドへの応答を待ちません。

       Postfix バージョン 2.0 以前で使えます:

       smtp_skip_4xx_greeting (yes)
              グリーティングで 4XX (立ち去って、後で再び試してください) 状態コ
              ードを返す SMTP サーバをスキップします。

       Postfixバージョン2.2以降で使えます:

       smtp_discard_ehlo_keyword_address_maps (empty)
              リモートSMTPサーバアドレスでインデックス化され、リモートSMTPサー
              バからの EHLO応答でSMTPクライアントが無視する、大文字・小文字 を
              区 別しない EHLOキーワード (pipelining, starttls, auth, etc.) の
              リストを持つ検索テーブル。

       smtp_discard_ehlo_keywords (empty)
              リモートSMTPサーバからの EHLO応答でSMTPクライアントが無視す る、
              大文字・小文字を区別しない EHLOキーワード (pipelining, starttls,
              auth, etc.) のリスト。

       smtp_generic_maps (empty)
              通常はインターネット越しのメール送信時にローカルで有効なアドレス
              を世界中で有効なアドレスに変換するような、SMTPクライアントでアド
              レス書き換える、オプションの検索テーブル。
MIME 処理の制御
       Postfix バージョン 2.0 以降で使えます:

       disable_mime_output_conversion (no)
              8BITMIME 形式から 7BIT 形式への変換を無効にします。

       mime_boundary_length_limit (2048)
              MIMEマルチパート境界文字列の最大長。

       mime_nesting_limit (100)
              MIME処理で扱う最大の再帰レベル。

外部コンテンツ検査の制御
       Postfix バージョン 2.1 以降で使えます:

       smtp_send_xforward_command (no)
              Postfix  SMTP サーバの EHLO 応答で XFORWARD サポートが通知された
              場合に、非標準的な XFORWARD コマンドを送ります。

SASL 認証の制御
       smtp_sasl_auth_enable (no)
              Postfix SMTP クライアントの SASL 認証を有効にします。

       smtp_sasl_password_maps (empty)
              ホストまたはドメインごとに1つの username:password エントリを持つ
              、オプションの SMTP クライアント検索テーブル。

       smtp_sasl_security_options (noplaintext, noanonymous)
              Postfix SMTP クライアントで使うことが許される認証メカニズム。

       Postfixバージョン2.2以降で使えます:

       smtp_sasl_mechanism_filter (empty)
              空でなければ、リモートSMTPサーバが提供するSASLメカニズムのリスト
              に対する、Postfix SMTPクライアントフィルタ。

STARTTLSサポートの制御
       STARTTLS 設定に関する詳細は TLS_README ドキュメントで見つかるでしょう。

       smtp_use_tls (no)
              日和見モード: リモートSMTPサーバがSTARTTLSサポートを案内し た ら
              TLSを使い、案内がなければ平文でメールを送ります。

       smtp_enforce_tls (no)
              強 制モード: リモートサーバがTLS暗号化を使うことを要求し、メール
              を平文では送りません。

       smtp_sasl_tls_security_options           ($smtp_sasl_secu-
       rity_options)
              Postfix SMTPクライアントがTLS暗号化SMTPセッションで使う、SASL 認
              証セキュリティオプション。

       smtp_starttls_timeout (300s)
              Postfix  SMTPクライアントによる、TLSスタートアップおよびシャット
              ダウン手順の中での読み書き操作の制限時間。

       smtp_tls_CAfile (empty)
              Postfix SMTPクライアント証明書を発行した認証局 (CA) の証明書を持
              つファイル。

       smtp_tls_CApath (empty)
              Postfix SMTPクライアントがリモートSMTPサーバ証明書を確認するのに
              使う、 PEMフォーマットの認証局証明書を持つディレクトリ。

       smtp_tls_cert_file (empty)
              PEMフォーマットの、Postfix SMTPクライアントRSA証明書を持つファイ
              ル。

       smtp_tls_cipherlist (empty)
              Postfix SMTPクライアントTLS暗号の選択スキームを制御します。

       smtp_tls_dcert_file (empty)
              PEMフォーマットでの、Postfix SMTPクライアントDSA証明書を持つファ
              イル。

       smtp_tls_dkey_file ($smtp_tls_dcert_file)
              PEMフォーマットでの、Postfix SMTPクライアントDSAプライベートキー
              を持つファイル。

       smtp_tls_enforce_peername (yes)
              TLS 暗号化が強制されているときに、リモートSMTPサーバホスト名がリ
              モートSMTPサーバ証明書の情報にマッチすることを要求します。

       smtp_tls_key_file ($smtp_tls_cert_file)
              PEMフォーマットでの、Postfix SMTPクライアントRSAプライベートキー
              を持つファイル。

       smtp_tls_loglevel (0)
              TLS 行動に関するPostfix SMTPクライアントのさらなるロギングを有効
              にします。

       smtp_tls_note_starttls_offer (no)
              TLSがまだ有効になっていなければ、STARTTLSを提供するリモー トSMTP
              サーバのホスト名をログに記録します。

       smtp_tls_per_site (empty)
              next-hopドメイン名やリモートSMTPサーバホスト名ごとのPostfix SMTP
              クライアントTLS利用ポリシーを持つ、オプションの検索テーブル。

       smtp_tls_scert_verifydepth (5)
              リモートSMTPサーバ証明書の検証の深さ。

       smtp_tls_session_cache_database (empty)
              オプションのPostfix SMTPクライアントTLSセッションキャッシュを 持
              つファイルの名前。

       smtp_tls_session_cache_timeout (3600s)
              Postfix  SMTPクライアントTLSセッションキャッシュ情報が期限切れと
              なる時間。

       tls_daemon_random_bytes (32)
              smtp(8) または smtpd(8) プロセスが内部擬似乱数生成器 (PRNG) に種
              を与えるために tlsmgr(8)  サーバから要求する擬似乱数のバイト数。

リソースと速度の制御
       smtp_destination_concurrency_limit        ($default_destination_concur-
       rency_limit)
              smtp メッセージ配送 transport を使った同じ配送先への並列配送の最
              大数。

       smtp_destination_recipient_limit ($default_destination_recipient_limit)
              smtp メッセージ配送 transport を使った、配送ごとの最大の受信者数
              。

       smtp_connect_timeout (30s)
              TCP 接続を完了するまでの SMTP クライアントの時間制限、またはゼロ
              (オペレーティングシステムのビルトイン時間制限を使います)。

       smtp_helo_timeout (300s)
              HELO または EHLO コマンドを送り、最初のサーバの応答を受け取る ま
              での SMTP クライアントの時間制限。

       smtp_xforward_timeout (300s)
              XFORWARD  コマンドを送り、サーバの応答を受け取るまでの SMTP クラ
              イアントの時間制限。

       smtp_mail_timeout (300s)
              MAIL FROM コマンドを送り、サーバの応答を受け取るまでの SMTP クラ
              イアントの時間制限。

       smtp_rcpt_timeout (300s)
              SMTP  RCPT  TO コマンドを送り、サーバの応答を受け取るまでの SMTP
              クライアントの時間制限。

       smtp_data_init_timeout (120s)
              SMTP DATA コマンドを送り、サーバの応答を受け取るまでの SMTP クラ
              イアントの時間制限。

       smtp_data_xfer_timeout (180s)
              SMTP  メッセージコンテンツを送る際の SMTP クライアントの時間制限
              。

       smtp_data_done_timeout (600s)
              SMTP "." を送り、サーバの応答を受け取るまでの SMTP クライアン ト
              の時間制限。

       smtp_quit_timeout (300s)
              QUIT コマンドを送り、サーバの応答を受け取るまでの、SMTP クライア
              ントの時間制限。

       Postfix バージョン 2.1 以降で使えます:

       smtp_mx_address_limit (0)
              メール交換機検索から得られる MX (メール交換機) IP アドレスの最大
              数、またはゼロ (制限なし)。

       smtp_mx_session_limit (2)
              諦 めるか fall-back リレーホストに配送するまでの、配送要求ごとの
              SMTP セッションの最大数、またはゼロ (制限なし)。

       smtp_rset_timeout (20s)
              RSET コマンドを送り、サーバの応答を受け取るまでの、SMTP クライア
              ントの時間制限。

       Postfixバージョン2.2以降で使えます:

       smtp_connection_cache_destinations (empty)
              指 定 された配送先に対するSMTP接続キャッシュを恒久的に有効にしま
              す。

       smtp_connection_cache_on_demand (yes)
              配送先がactiveキューに大容量のメールを持つ間だけSMTP接 続 キャッ
              シュを有効にします。

       smtp_connection_cache_reuse_limit (10)
              SMTP接続キャッシュが有効になっている時の、接続を閉じるまでにSMTP
              セッションが再利用される回数。

       smtp_connection_cache_time_limit (2s)
              SMTP接続キャッシュが有効になっている時の、使われていないSMTP  ク
              ライアントソケットを閉じずに開いたままにする時間。

トラブルシューティングの制御
       debug_peer_level (2)
              リ モートクライアントまたはサーバが debug_peer_list パラメータの
              パターンにマッチした場合の、冗長ログレベルの増分。

       debug_peer_list (empty)
              冗長ログレベルを $debug_peer_level で指定された量だけ増加させ る
              、リモートクライアントまたはサーバのホスト名またはネットワークア
              ドレスのパターンのオプションのリスト。

       error_notice_recipient (postmaster)
              ポリシー、リソース、ソフトウェアまたはプロトコルエラーによって起
              きたメール配送問題に関するポストマスターへの通知の受信者。

       notify_classes (resource, software)
              ポストマスターに報告されるエラークラスのリスト。

その他の制御
       best_mx_transport (empty)
              "mail  loops  back to myself" エラー条件を検出した場合に Postfix
              クライアントがメールを送るべき場所。

       config_directory ('postconf -d' の出力を参照)
              Postfix main.cf および master.cf 設定ファイルのデフォルトの場 所
              。

       daemon_timeout (18000s)
              ビルトイン監視タイマーによって終了するまでの、Postfix デーモンプ
              ロセスが要求を扱うことができる時間。

       disable_dns_lookups (no)
              Postfix SMTP および LMTP クライアントでの DNS 検索を無効にします
              。

       fallback_relay (empty)
              見つからなかったり到達できない SMTP 配送先への、オプションのリレ
              ーホストのリスト。

       inet_interfaces (all)
              このメールシステムがメールを受け取るネットワークインターフェース
              アドレス。

       inet_protocols (ipv4)
              Postfixが接続したり受ける際に使おうとするインターネットプロト コ
              ル。

       ipc_timeout (3600s)
              内部通信チャネルを使った情報の送受信の時間制限。

       max_idle (100s)
              Postfix デーモンプロセスが終了するまでに次のサービス要求を待つ最
              大時間。

       max_use (100)
              Postfix デーモンプロセスが終了するまでの接続要求の最大数。

       process_id (read-only)
              Postfix コマンドまたはデーモンプロセスのプロセス ID。

       process_name (read-only)
              Postfix コマンドまたはデーモンプロセスのプロセス名。

       proxy_interfaces (empty)
              プロキシまたはネットワークアドレス変換ユニットを通して、このメー
              ルシステムがメールを受け取るネットワークインターフェースアドレス
              。

       smtp_bind_address (empty)
              IPv4接続の際にSMTPクライアントがバインドする、オプションの数字の
              ネットワークアドレス。

       smtp_bind_address6 (empty)
              IPv6接続の際にSMTPクライアントがバインドする、オプションの数字の
              ネットワークアドレス。

       smtp_helo_name ($myhostname)
              SMTP EHLO または HELO コマンドで送るためのホスト名。

       smtp_host_lookup (dns)
              SMTP  クライアントがホストの IP アドレスを検索するのに使うメカニ
              ズム。

       smtp_randomize_addresses (yes)
              優先度が同じ MX ホストアドレスの順番をランダムにします。

       syslog_facility (mail)
              Postfix ロギングの syslog facility 名。

       syslog_name (postfix)
              例えば "smtpd" が "postfix/smtpd" となるようにするために  syslog
              レコードのプロセス名の前に付けられるメールシステムの名前。

関連項目
       qmgr(8), キューマネージャ
       bounce(8), 配送状態レポート
       scache(8), 接続キャッシュサーバ
       postconf(5), 設定パラメータ
       master(5), 一般的なデーモンオプション
       tlsmgr(8), TLSセッションおよびPRNGの管理
       master(8), プロセスマネージャ
       syslogd(8), システムロギング

README ファイル
       SASL_README, Postfix SASL howto
       TLS_README, Postfix STARTTLS howto

ライセンス
       The Secure Mailer license はこのソフトウェアと一緒に配布されなければ い
       けません。

作者
       Wietse Venema
       IBM T.J. Watson Research
       P.O. Box 704
       Yorktown Heights, NY 10598, USA

       コマンドパイプラインは以下の人と協力しました:
       Jon Ribbens
       Oaktree Internet Solutions Ltd.,
       Internet House,
       Canal Basin,
       Coventry,
       CV1 4LY, United Kingdom.

       接続キャッシュは以下の人と協力しました:
       Victor Duchovni
       Morgan Stanley

       TLSサポートは元々以下の人によるものです:
       Lutz Jaenicke
       BTU Cottbus
       Allgemeine Elektrotechnik
       Universitaetsplatz 3-4
       D-03044 Cottbus, Germany

                                                                       SMTP(8)